"百寿の秘密"は、地元の豆や魚、野菜をふんだんに使った家庭料理―。
116歳まで生きた木村次郎右衛門さんが暮らした京都府京丹後市が市内の100歳以上の高齢者を対象に調査したところ、こんな結果が出た。
市は地元料理の作り方をまとめたレシピ本も刊行。
監修した料理研究家の坂本広子さん(67)は「これぞ和食の原点。地元にあるものを上手に使って、タンパク質やミネラルを摂取している。未来に残したい理想的な食事」と話している。
市は日本海に面し、人口5万9422人で100歳以上が59人(昨年9月1日現在)。
10万人当たりに換算すると99・29人に上り、全国平均の約2・33倍になる。
長寿の秘密を探ろうと、市の管理栄養士や保健師らが昨年4~5月、市内の100歳以上の37人から聞き取り、日常的に食している延べ297品目を幼少期、成人前期、成人後期、現在に分けて集計した。
結果、それぞれの時期にほぼ共通していたのは▽地元の豆、海藻類を食べ続けていた▽山菜類、ごま類の摂取が多い▽だしはほとんどの料理に煮干しを使用している―ことが判明した。
海の幸の保存と調理法にも特徴があった。
日本海が荒れて魚が取れなくなったときに備え、魚や海藻を干物にする習慣があった。
焼いて食べるのが一般的な干し魚を煮て、骨まで食べていた。
干し魚の煮付けを初めて見たという坂本さんは「煮くずれせず、味も凝縮される。焼かないので、燃料も少なくて済む」とうならされたという。
また、ほとんどの人が「腹八分目」を心がけ、間食をしていなかった。
次郎右衛門さんのモットーも「食細くして命永かれ」。
孫の妻で晩年、次郎右衛門さんの料理を作っていた木村栄子さん(60)は「特別なことはせず、近所の人から届く素材を調理した」と振り返る。